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放射能汚染汚泥の
       セメント処理問題






 放射能汚泥のセメントキルン処理

 市民の健康を守れるのか

 〝低レベルでも人体に影響ある〟は世界の常識



 糸魚川市内の明星セメント株式会社と電気化学工業株式会社のセメント工場で新潟県内自治体の放射能汚染上水道汚泥がセメント原料として処理されています。




  20142月までの放射能汚染上水道汚泥処理量
    
  

 ・明星セメント株式会社糸魚川工場

 長岡市搬出分    2013. 12014.12   12,560.8
トン  1289   ベクレル/kg
 燕市  搬出分    2013. 62014.12    4,056.0 トン  10未満90 ベクレル/kg
 十日町市搬出
    2013.12              14.4トン   75      ベクレル/kg

                              
16,631.0 トン


 ・電気化学工業株式会社青海工場

 新潟市 搬出分   2013. 12014.12   13,418.4 トン  1292 ベクレル/kg
 新発田市搬出分   2013. 6~2014.12    1.007.0 トン  1895 ベクレル/kg
 三条市 搬出分   2013.12            28.0トン   22    ベクレル/kg

                           14,453.4 トン

   総計                     31,084.4トン



  
 
 放射能汚染下水道汚泥受け入れ量  2012年度~2014年度12まで


                                      セシウム濃度
 ・明星セメント株式会社糸魚川工場
 85,521 トン 検出下限値~ 16ベクレル/kg.                   
 ・電気化学工業株式会社青海工場 27,990 トン 検出下限値~100ベクレル/kg

  ※2014年度搬入汚泥のセシウム濃度は、

          明星セメント社 … 検出下限値以下
          電気化学工業社 … 検出下限値~38ベクレル/kg
   
        

       セメント工場は、放射能処理工場ではない

 セメント工場には、セメントの粉じんを除去する装置はありますが、放射性物質 除去を目的とする装置は備えていません。

  問題となっている放射性セシウムは641度で気化するとのことです。
 セメントキルンの中は1,450度とのこと。気化した放射性セシウムを、煤塵同様、  集塵機で完全に捕集できるのでしょうか。

  説明会では、気化しても
キルンから出て温度が下がれば再び煤塵とくっついて  99.9% 除去できるとの説明のようですが、実証されているのでしょうか。0.1%は大 丈夫なのでしょうか。

  セメント工場は、放射能処理工場ではありません。セメントをつくるためのプラ ントです。放射能汚染汚泥処理が10年、20年と続いた場合、たとえ少量であったと しても煙突から放射性物質が放出されるとしたら、市民、特に子ども達の健康に被 害を及ぼさないともかぎりません。放射性セシウム137が殆どない状態になるのは  300年後です。

 国の場当たり的な対応で将来に禍根を残すようなことがあってはならないと考え ます。


      排ガス線量を正確に測っているのか

 放射性セシウムはベータ線を出して崩壊しバリウム137m(不安定なバリウム)に変 化します。

 バリウム137mから安定したバリウム137(放射線は出さない)にかわる時にガンマ 線を出すとのことです。

 放射性セシウムの半減期は30年、バリウム137mの半減期は約3分と言われていま す。

  大学レベルの放射線測定器であれば様々な放射線をはかれるとのことですが、セ メント工場の煙突から出ているセシウム137を含む排ガスは正確に測られているの でしょうか。内部被ばくで問題になるのはベータ線です。


           原則は封じ込めと拡散防止

  放射性物質処理の原則は、封じ込めと拡散防止です。福島第一原発周辺では、ど のようにしても人が住めない場所が出てきます。

  チェルノブイリ原発事故の経過を考えれば明らかです。残念ですが、そのような 場所を選んで、放射性物質で汚染された汚泥を処理するしかないのではないでしょ うか。
 
  セメントに混ぜて全国に拡散させるのは愚策としか言いようがありません。


           100ベクレル以下は安全か

 3.11東電福島原発事故以降の東電と民主党政権は、資料を隠す、発表を遅らせる 、安全を考えて規準を決めるのではなく、汚染の現状に合わせて規準を決めるなど という対応に終始しました

  食品規準の100ベクレル以下だから安全という言い方も、世界の常識からはずれ ています。

 これまでの被ばくの研究から、人体に影響のない被ばくは存在しないことがはっ きりしてきています。

 欧州放射線リスク委員会の考え方を取り入れているところは、だいたい20ベクレ ルとのことです。


       小さい子ほど影響が大きい

 人間の身体は約60兆個の細胞でできています。最初の細胞は、父親の精子と母親 の卵子が受精した、1個の受精卵です。それが細胞分裂を繰り返し人間の身体がで きていきます。

 細胞には核があり、その中にDNAが入っています。全ての細胞のDNAには人間の 身体をつくる同じ遺伝情報が入っています。

 放射線に被ばくするとDNAが切断されたり傷ついたりして遺伝子異常をひきおこ します。特に放射線に弱いのは、DNAが複製され細胞分裂がおこる時と言われてい ます。

 乳幼児ほど被ばくの影響が大きいのは、成長するために細胞分裂が活発なためで す。

 1ミリシーベルトの被ばくは、60兆個の細胞すべての核を通過するだけの線量とい うことです。1マイクロシーベルトであればその1000分の1600億個の細胞の核に 放射線が通ることを意味します。

 放射線の量が少なくても、放射線が透過したり照射される細胞の数が少ないだけ で、DNAが切断されたり傷つけられたりして遺伝子異常をひきおこすことに変わり はありません。

  最近では、被ばくした細胞から被ばくしなかった細胞に被ばく情報が伝えられる 現象、被ばくの損傷を乗り越えた細胞が長期間にわたって様々な遺伝的変化を生じ 続ける現象等々、被ばくの研究から徐々に明らかにされてきているとのことです。


        市民の安全・安心が第一

  電化社、明星社とも100ベクレル以下の水道汚泥を毎年受け入れていますが、 将来を見据え、判断を誤らないようにしなければなりません。

  長期間、放射能汚染汚泥をセメントキルンに投入、処理し続けることによって、 大量の放射性物質がセメントキルンに投入されることになります。

 空中浮遊する放射性物質を吸い込み内部被ばくする心配はないのか、糸魚川市が 放射能汚泥処理工場のまちになることによる風評被害はどうするのか。

 既に行われている放射能汚染された下水道汚泥処理の問題も含め、明星セメント 株式会社電気化学工業株式会社、糸魚川市の責任を明確にしておく必要がありま す。

 基本は、低レベルであっても放射性物質は持ち込まないことではないでしょうか 。このような重大な問題を住民合意なしに進めることは許されないと考えます。



  用語解説


 ICRP - 国際放射線防護委員会

  アメリカが核兵器を使って、それが人体にどんな影響を与えるかを研究するためにつ くられた機関。

 低線量でもあびた放射線量と影響は比例する。放射線の量が少なくなるとリスクも少 なくなるが、ゼロにならない限りリスクはあるという考え方。

 アメリカ科学アカデミーの中の

    BEIR - 電離放射線の生物学的影響に関する委員会

  20057番目の報告『…委員会は以下の結論に達した。被ばくのリスクは低線量にいた るまで直線的に存在し続け、しきい値はない。最小限の被ばくであっても、人類に対し て危険を及ぼす可能性がある。こうした仮定は「直線、しきい値なし」モデルと呼ばれ る』

 ※しきい値(閾値) … 症状が出はじめる最低限の被ばく量のこと。
           「この量以下の被ばくなら安全ですよ」という値。

 ECRR - 欧州放射線リスク委員会

  チェルノブイリの事故後、欧州の学者が中心になってつくられた組織。

  すべてのものは微量でも影響はある。最初から、影響ないという考えを前提にするの は間違いという考え方。

 日本の政府、放射線学会

  100%危ないことを証明しない限り、これは安全である。ある一定の線量以下では影響 ない、という考え方。


 放射線 … 放射性物質からとびだして、空気中や物質中を飛んでいる目に見えな   い微細な粒子

 放射線の主な種類 

   アルファ(α) 透過力が弱い

       紙1枚でくい止められる

       ウラン238(一部は自発核分裂で中性子線をだす) プルトニウム239

  ベータ(β)線   透過力がある    
       5mmのアルミニウムや1cmのプラスチック板でくい止められる
      ヨウ素131 セシウム137  ストロンチウム90

   ガンマ(γ)線   透過力が強い   
       5cmのコンクリートでも完全にはくい止められず、一部は通りぬけて       行く。
       鉛や鉄などの金属が有効
      テクネチウム99m  バリウム137m
  

 放射能
  … 放射線をだす能力 
       


 放射性物質… 放射能をもった物質

 半減期  … 放射線をだす力が半分になるまでの期間(物理学的半減期)
        殆どなくなる(1000分の1)までには半減期の10倍かかる。
        セシウム137の半減期は30年なので、30年経つと50%になり、さらに               30年経つとその半分の25%に、さらに30年経過(90年後)すると12.5%          になる、というように殆ど放射線をだす力がなくなるまでには300
        必要。

         ヨウ素131 8日 セシウム134 2年 セシウム137 30年             ストロンチウム90 29  プルトニウム239 24000

     ※ 人間の身体の中に入った場合の半減期は別になります。
        セシウム134137の生物学的半減期は2110日となっています。


 放射性物質の核種別半減期

           物理学的半減期    生物学的半減期   蓄積しやすい場所

           放射線をだす力が半分に    放射性原子の半数が
              なるまでの期間      対外に排出されるのに
                              かかる期間

    ヨウ素131       8日       80(甲状腺)   甲状腺・全身 
   セシウム134      2年       2110日     筋肉・全身  
   セシウム137      30年       2110日     筋肉・全身  
   ストロンチウム90   29年       50()     骨
   プルトニウム239  24000年       50()     骨・肝臓・生殖腺
 

 DNA

 身体をつくっている細胞の「設計図」のようなもの。
 二重らせん構造のDNAの長さは1.8m。骨、皮膚、心臓、目など、人間の身体をつくる全 ての情報が入っています。

  1999930日に東海村の核燃料加工工場で臨界事故が発生した時、大量被ばくした方 が二人亡くなりました。皮膚も骨も腸も焼けただれていて、細胞が再生されずどんどん 下血をしてなくなりました。その方たちのDNAはばらばらになっていたそうです。DNA が大量の放射線を浴びることでばらばらに切断され、皮膚も内臓も再生できなくなって いました。

 ベクレル 

  1秒間に1個の原子が放射線をだして別の原子にかわるのを1ベクレルと言います。

  ホウレンソウ1kg当たり100ベクレルというと、1kgのホウレンソウが1秒間に100個の 放射線を出していることになります。

 グレイ

  放射線を浴びて人体が吸収したエネルギーの積算量。

 シーベルト

  放射性物質の種類によって放出される放射線の種類や強さが異なるので、それらを同 じレベルで見られるように調整したもの。吸収線量に放射線荷重係数を掛けて、人体に 対する影響を表したものです。


 外部被ばく … 放射線がからだの外側からつきぬけること。その際、DNAに損         傷を与える。

 内部被ばく … 呼吸や食事で放射性物質がからだの中にはいってしまい、か   らだの内側から放射線を浴びること。